いよいよ今日から、古典の世界へ本格的な旅を始めましょう。物語の海を深く旅していくと、昔の人々の息づかいや、きらめくような感性に触れることができます。…でも、その海の入り口には、ちょっぴり手ごわい門番がいるのよね。
その名も、「歴史的仮名遣い」。
これを見ただけで、「うわ、古文ってやっぱり難しい!」「意味が分からない!」って、心が折れそうになってしまう子も多いはず。
でもね、絶対に大丈夫。 歴史的仮名遣いは、難しい暗号なんかじゃない。それは、昔の人が話していた「発音」が、そのまま文字になっただけの、とっても素直な言葉なんだ。
例えるなら、古い映画やアニメを見たときに、「あれ?今の言葉とちょっとだけイントネーションが違うな」って感じること、あるでしょう? あれと同じ。昔の発音ルールさえ分かってしまえば、門番はにっこり笑って君を迎え入れてくれるよ。
さあ、時計を見て。たった10分で、君はこの最初の関門を突破できるようになるからね!
古典文法、最初の関門「歴史的仮名遣い」を10分で理解する
そもそも「歴史的仮名遣い」って何?
一言でいうと、昔の人が使っていた「書き方」のこと。 平安時代の人たちが話していた発音を、そのままひらがなで書いたものです。時代が流れて、私たちの話し方(発音)は少しずつ変わったけど、文章の中には昔の「書き方」が化石のように残っている。それが歴史的仮名遣いなの。
だから、私たちはその化石を、今の言葉に「翻訳」してあげる必要があるんだね。 その翻訳ルールは、実はたった3つの黄金ルールを覚えれば、ほとんど解けてしまうんだよ!
これだけ!3つの黄金ルール
黄金ルール①:ハ行は、ア行の音にワープする!
これが一番大事なルール! 言葉の最初以外にある「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、現代語では「わ・い・う・え・お」と発音します。
- は → わ
- 例:「かは」→「かわ」(川)、「いは」→「いわ」(岩)
- ひ → い
- 例:「こひ」→「こい」(恋)、「にほひ」→「におい」(匂い)
- ふ → う
- 例:「思ふ」→「おもう」(思う)、「言ふ」→「いう」(言う)
- へ → え
- 例:「かへる」→「かえる」(帰る)、「思へば」→「おもえば」(思えば)
- ほ → お
- 例:「いほ」→「いお」(庵)
- 例:「いほ」→「いお」(庵)
【覚え方】 「ハヒフヘホは、ワ行とア行になる」と覚えるより、「ハ行は、母音(あいうえお)の音になる!」とシンプルに覚えよう! ※ただし、「は」だけは「わ」になる特別ルール、と覚えてね。
🌸 橘先生からの補足 🌸
「かをる」→「かおる」という変換も、とてもよく出てくるの。
実は、「かをる」の「を」が「お」になるのは、ハ行のルールとは少し違う、「を」→「お」という別のルールなの。でも、どちらも「お」の音になるから、最初は仲間として覚えておくと便利よ。頻出単語だから、この子は特別に覚えてあげましょうね。
黄金ルール②:「ゐ」と「ゑ」は、ただの「い」と「え」!
現代では使わない、ちょっと特別なひらがな。でも、読み方はとってもシンプル!
- ゐ → い
- 例:「ゐる」→「いる」(居る)、「ゐなか」→「いなか」(田舎)
- ゑ → え
- 例:「こゑ」→「こえ」(声)、「ほほゑむ」→「ほほえむ」(微笑む)
【覚え方】 見た目に惑わされないで! 「ゐ=い」「ゑ=え」と、そのまま変換するだけ。
黄金ルール③:文末の「む」は、「ん」になる!
これは、助動詞のところで大活躍するルールだよ。
- む → ん
- 例:「あらむ」→「あらん」(〜だろう)、「言はむ」→「いわん」(〜だろう)
【覚え方】 言葉の最後に「む」が来たら、口を閉じて発音するから「ん」になる、とイメージしよう。
腕試し!解読チャレンジ
さあ、覚えたてのルールで、この古文を読んでみよう!
- あはれなり
- ものを思へば
- ゐなかのわらべ
- 言はむとす
※答えをクリックすると答えが表示されます
【答え】
- あわれなり (ルール① は→わ)
- ものをおもえば (ルール① ほ→お、へ→え)
- いなかのわらべ (ルール② ゐ→い)
- いわんとす (ルール① は→わ、ルール③ む→ん)
どうかな? 読めるようになったでしょう? この他にも「ぢ→じ」「づ→ず」「くわ→か」など細かいルールもあるけど、入試ではまずこの3つの黄金ルールが分かっていれば、大きな武器になるからね。
橘先生からのメッセージ
歴史的仮名遣いの門番、もう怖くないよね。 君は、昔の人の言葉を、彼らの本当の発音で聞くための「鍵」を手に入れたんだ。
「思ふ(おもふ) 」という文字を見て、君の頭の中で「思う(おもう) 」という声に変換する。その一瞬一瞬が、君と平安時代の人たちとの距離を、ぐっと縮めてくれる魔法なんだ。
言葉は、時代を超えて人の心をつなぐ、温かい架け橋。 さあ、鍵は手に入れたよ。これから、たくさんの物語の扉を、一緒に開けていきましょうね。