さて今日は、そのお家をさらに素敵に、そして丈夫にするための、小さな巨人たちのお話です。その名も「助詞」と「助動詞」。
「てにをは」という言葉を聞いたことがあるでしょう? あれが助詞のこと。そして、述語にくっついて色々な意味をプラスしてくれるのが助動詞。どちらも一文字か二文字の短い言葉なのに、文全体の意味をガラリと変えてしまうほどの、すごい力を持っているの。
でも、この二つ、姿が似ていることがあって、「どっちがどっちだっけ?」って迷ってしまう子が多いのも事実。 特に「な」とか「に」とか…。
「言葉はね、君の心を映す鏡なんだよ」
この小さな巨人たちと仲良くなれば、君の言葉はもっと繊細に、もっと正確に、君の心を映し出せるようになる。今日は、もう二度と迷わないための、とっておきのトレーニングを一緒にやっていきましょうね。
これで完璧!助詞・助動詞の識別トレーニング
まずは「黄金ルール」を頭に入れよう!
助詞と助動詞を見分けるための、たった一つの、そして絶対のルールがあります。それは…
活用するか、しないか
- 助詞(言葉の「接着剤」)
- 活用しない。 形はいつも同じ。
- 名詞などの自立語について、言葉と言葉の「関係」を示す。「が」「を」「に」「へ」「と」など。
- 助動詞(述語の「変身アイテム」)
- 活用する! 後ろに来る言葉によって、形が変わる。
- 動詞などの用言について、意味をプラスする。「ない(打ち消し) 」 「れる(受け身)」「た(過去)」など。
「活用するって、どういうこと?」って思うよね。 難しく考えなくて大丈夫。見分けるための魔法のテストがあるんだ。それは、下に「ない」や「て」を付けてみること。
言葉の形が変われば → 助動詞(または、動詞・形容詞などの用言) 言葉の形が変わらなければ → 助詞
さあ、この魔法のテストを持って、識別トレーニングに出発しよう!
実践!識別トレーニング
トレーニング①:最重要!「ない」のミステリー
「ない」は入試で一番狙われる、とても大切な言葉だよ。実は「ない」には二種類あるんだ。
- A:今日は、宿題をする時間がない。
- B:彼は、まだ宿題をしていない。
さあ、AとB、どちらが助動詞の「ない」かな?
【橘先生のヒント】 助動詞の「ない」は、動詞などの動きを「打ち消す」働きをするよ。
※答えと解説をクリックすると答えが出てきます。
【答えと解説】
正解は… Bが助動詞の「ない」です!
- Bの「ない」は、「する」という動詞の動きを打ち消しているよね。これが助動詞。
(例:見ない、食べない、来ない)
- Aの「ない」は、「時間がある」の反対で、物事が「存在しない」ことを表している。これは実は、形容詞なんだ。「ない」そのもので一つの文節を作っているでしょう?
(例:お金がない、元気がない)
これはセットで覚えておこうね。「動きの打ち消し」なら助動詞!
トレーニング②:「に」の二つの顔
- A:夕方、図書館に行く。
- B:図書館では、静かに本を読む。
AとB、助詞の「に」はどっちかな?
【橘先生のヒント】 助詞は「接着剤」。活用しないのが特徴だったよね。
※答えと解説をクリックすると答えが出てきます。
【答えと解説】
正解は… Aが助詞の「に」です!
- Aの「に」は、「図書館」という場所と「行く」という動きを繋ぐ助詞(格助詞)だね。この「に」は、どんな時も「に」のまま。活用しないよね。
- Bの「に」は、「静かだ」という形容動詞が活用した形(連用形)なんだ。「静かだろう」「静かだった」「静かならば」…ほら、形が変わるでしょう? このように活用する言葉の一部なので、助詞ではないんだ。(※品詞分解では「形容動詞の一部」または「助動詞『だ』の活用形」と答えるよ)
トレーニング③:「な」の三つの役柄
- A:大きな声で話すな。
- B:なんて美しい景色なんだろうな。
- C:ここは静かな場所だ。
さあ、この中で助詞の「な」はどれか分かるかな?
【橘先生のヒント】 文の最後にあって、気持ちを表す助詞があったよね…?
※答えと解説をクリックすると答えが出てきます。
【答えと解説】
正解は… Bが助詞の「な」です!
- Aの「な」は、「話す」という動詞について「禁止」の意味を表している。これは助動詞だよ。
- Bの「な」は、文の終わりに付いて「感動・詠嘆」の気持ちを表している。これは活用しないので助詞(終助詞)なんだ。
- Cの「な」は、トレーニング②の「に」と同じで、「静かだ」という形容動詞が活用した形(連体形)だね。「きれいな花」なども同じ。だから、これも助詞じゃないんだ。
橘先生からのメッセージ
どうだったかな? 少し頭がポカポカしてきたかもしれないね。 でも、今日やったトレーニングの根っこは、たった一つ。「活用するか、しないか」だけ。
一見、同じに見える言葉でも、その働きや役割は全然違う。それは、私たち人間と同じかもしれないね。 言葉一つひとつの性格をちゃんと知って、正しく使ってあげること。それが、君の心を豊かに表現する、何よりの力になるんだ。
間違えても大丈夫。その一つひとつが、君と言葉の距離を縮めてくれる、大切な出会いだから。